2023年 読みたい・読んだ本リスト(随時更新)

2023-01-04 15:44:44

最終更新日:2023/12/23

毎年恒例、読みたい本を記載しておく。
リストは随時更新するので、読んだ本リストにもなるかな。
小説系はネタバレ関係なく書いているので、気になる人はその項目は読まない方がいいかも。

去年読みきれなかった本は今年にも追加している。

ちなみに、過去分は下記

2021年 読みたい・読んだ本リスト(随時更新)
2022年 読みたい・読んだ本リスト(随時更新)

目次

  1. 高性能紙飛行機: その設計・製作・飛行技術のすべて
  2. 銃・病原菌・鉄 下巻
  3. ぞくぞく村のおばけシリーズ
  4. かいけつゾロリシリーズ
  5. 三国志
  6. 日本沈没
  7. 井伊直虎 女にこそあれ次郎法師
  8. 英語史で解きほぐす英語の誤解―納得して英語を学ぶために
  9. 覇道の槍
  10. 星を継ぐもの
  11. ガニメデの優しい巨人
  12. 巨人たちの星
  13. 内なる宇宙 上
  14. 内なる宇宙 下
  15. PIRATES OF CARIBBEAN:THE CURSE OF THE BLACK PEARL
  16. ジャック・スパロウの冒険 1 嵐がやってくる!
  17. プロテウス・オペレーション
  18. ジャック・スパロウの冒険 2 セイレーンの歌
  19. じんかん
  20. 断絶への航海
  21. 未踏の蒼穹
  22. ペナンブラ氏の24時間書店
  23. はじまりの24時間書店
  24. チンギス紀 一 火眼
  25. チンギス紀 二 鳴動
  26. チンギス紀 三 虹暈
  27. チンギス紀 四 遠雷
  28. チンギス紀 五 絶影
  29. チンギス紀 六 断金
  30. チンギス紀 七 虎落
  31. チンギス紀 八 杳冥
  32. チンギス紀 九 日輪
  33. チンギス紀 十 星芒
  34. チンギス紀 十一 黙示
  35. チンギス紀 十二 不羈
  36. チンギス紀 十三 陽炎
  37. チンギス紀 十四 萬里
  38. チンギス紀 十五 子午
  39. チンギス紀 十六 蒼氓
  40. チンギス紀 十七 天地
  41. あなたの人生の物語
  42. 英語感覚をみがく―表現とコミュニケーション
  43. うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81
  44. 鵼の碑
  45. 英語耳
  46. もものかんづめ
  47. 白と黒のとびら
  48. 精霊の箱 上
  49. 精霊の箱 下
  50. 造物主(ライフメーカー)の掟
  51. 造物主(ライフメーカー)の選択
  52. 数の女王

高性能紙飛行機: その設計・製作・飛行技術のすべて

2021年からの継続
もってるのだけど、まだ読んでない

銃・病原菌・鉄 下巻

銃・病原菌・鉄 下巻
ジャレド ダイアモンド(著), 倉骨 彰(翻訳)

2021年からの継続
途中から全然すすんでない

ぞくぞく村のおばけシリーズ

2022/08/21 1巻読了、今後順次読んでいく
2022年からの継続、もうすぐ終わりそう。

2023/01/13 全巻読了

懐かしさから1巻を読んだが、子供も気に入ったので、全巻読破。
定番のおばけキャラを上手く考え直して面白い話にしたのは流石だな。
どのキャラも愛嬌があり、さらに色々話を広げていける感じだったから、
作者の末吉暁子さんは病気がなければもっと書いていたのではないかと思われる。
悲しいなー。もっと書いてほしかった。

かいけつゾロリシリーズ

2022年からの継続、もうすぐ終わりそう。
2022/08/21 71巻出ているうちの、60巻ぐらいは読んでいると思う、今後残り読んでいく

2023/01/15 全巻読了

最新巻の72巻を含めて、全部読破。
ほんとウチの子はゾロリが好きなんだよね。
アプリのバーチャルゾロリ城も毎日欠かさずやっているし。

作者の原ゆたかさんには本当にお世話になっている。
よくもこれだけネタが思いつくよなー。
今後もぜひとも面白い話を書いてください。

三国志

2022年からの継続、もうすぐ終わりそう。
2022/11/22 読み中。全巻読破したら感想書く。
2023/01/04 読了

ようやく、横山三国志を読破した。
長かったなー。
項羽と劉邦の後、図書館で2週間に3冊から5冊のペースで借りて読んだので、思ったより時間がかかった。

この長い話をよくこんなに面白く漫画化できたなと思う。
これ潮漫画文庫だと1巻に2巻分収録されているから30巻だけど、初出は60巻あったというから、いかに書き続けたが分かるよね。

吉川英治の三国志演義を元にしているから、
蜀が主役は当たり前、物語後半はほとんど諸葛亮孔明の出番って感じだったけど、
ラスト3巻ぐらいのだんだん諸葛亮孔明の策略が通じなくなってくるっていうのが良かったな。
それまで策略が通じていたのは、勿論孔明がスゴイってのはあるんだけど、
それを実現できるほどの人材が蜀にいたってのが大きいよね。
特に五虎大将軍。
これらの綺羅星の如くいた人物達がバンバン死んでいくスピード感も良い。
そして、それらの人物がいなくなると、諸葛亮孔明は得意の天文でも外して、司馬懿仲達を討ち取れなかった(ついでに魏延もw
ああ、もう物語は終わりなんだなと思ったね。

途中で言えば、南蛮平定戦はちょっと長すぎないかね。
まあ、藤甲軍のエピソードとか、色々有名な話を入れるには仕方なかったのかもしれないけど。

そして、これを読んだことで、
ネットに溢れる横山三国志1コマの元ネタが分かったのが楽しい。
司馬懿仲達の「待て あわてるな これは孔明の罠だ」とか、
馬超の「むむむ」と李恢の「なにがむむむだ!」の返しとか、
曹操の「げえっ 関羽」とか。
読んでて、ああ、ここで出てくるの!?と驚きと笑いで楽しかった。

横山光輝の遺作「殷周伝説」も読んでみたいけど、図書館にないんだよなー。

日本沈没

2022年からの継続
読み中

井伊直虎 女にこそあれ次郎法師

2023/01/02 読了

今年1冊目は、井伊直虎。
元々大河ドラマの「おんな城主直虎」は見てて、
柴咲コウ主演の直虎には好感を持っていたのだけれど、
ここ最近の僕の中での歴史ブームの中で、再度井伊直虎を知ってみたいと思った。

で、できれば大河ドラマで話題になる前に出版された本はないかなと思って探して見つかったのがこの作品。
発売日が2016/8/25になっているが、実際は2006年出版の本を文庫化したというもの。

まだ話題になる前のためか、変なドラマ性とかが少なく、興を削がれることなく楽しめた。
しっかりと調べてあり、それを飽きさせない物語にしていたのは非常に良かった。

作者の梓澤要という人は今まで知らなかったけど、歴史モノを書くのは上手いなと思った。

中でも良かったのは、井伊直虎がどうにもできなかったことに無理やり絡ませることはなかったこと。
瀬名が殺されてしまうというところでも、直虎は対面に間に合わなかったという形で描いているが、
これが対面して、何か二重三重に史実を捻じ曲げていると興醒めしたところだったので、非常に好感が持てた。

今年の大河ドラマ「どうする家康」は、あまり期待はしていないが、
ちょうど時代も地域も似通っており、上記の瀬名のエピソードなどはどう描かれるのかが気になるところではある。

英語史で解きほぐす英語の誤解―納得して英語を学ぶために

2023/01/06 読了

以前も堀田隆一さんの英語史の本を読んだが、
また別の本を借りて読んでみた。

だいたいが以前と同じだが、
英語と他言語の比較をちゃんとグラフや表を使っているので、説得力があるし、
今後英語がどうなっていくのかの予測なども楽しかった。
一度似た内容をざっと読んでいたせいか、3日で読めてしまった。

覇道の槍

2023/01/25 読了

去年読んだ最上義光の本の作者、天野純希さんの本なので手にとってみた。

三好家というと、どうしても三好三人衆の足利義輝暗殺が思い浮かぶから、
あまりいいイメージを持っていなかった。
いや、正直言うと、かなり悪い奴らというイメージしかなかったのだが、
この本を読んで、イメージが変わった。
勿論、史実において、こんなに元長がかっこ良かったかはともかく、
1500年代前半の近畿の状況なども学べて、非常に楽しかった。

そして、終章のラストよ。
そういうことかーって感じで、勘のいい人なら展開が読めたのかもしれないが、
僕は普通に物語を楽しんでいるだけだったから、予想もしていなくてびっくりという感じ。
割とネタバレを普通に書く僕でも、これは書けない。是非本書を読んでほしい。

その他、この作者の本は、話のテンポは非常にいい。
必要なところだけしっかり書かれており、無駄な記述がない。
そのため、ある程度読者の想像で理解できることが多く、それがテンポの良さにつながっていると思う。
だからサクサク読めたし。こういう作品は手が止まらなくなるから楽しい。

ただ、最上義光もそうだったけど、
主人公の人物像がどうも浅いんだよね。
どうしてもカッコよく書かないといけないせいで、ヒーローと化してしるし、
謀略で誰かを陥れても、ダークヒーロー的な感じがしてしまう。
それが悪いっていうことではないが、ちょっと人間味に欠けるんだよなー。
細川六郎とかのほうがよっぽど人間くさかった。(まあだからといって細川六郎を好きにはなってないけど)

次、この人の本を読むとしたらもっと人間臭い主人公の話がいいなー。

そういえば、タイトルの「覇道の槍」って意味が最後までよく分からなかった。

星を継ぐもの

星を継ぐもの 巨人たちの星シリーズ (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン(著), 池 央耿(翻訳)

2023/01/29 読了

言わずとしれたSFの名作。
今まで何度となく読んでいるが、そういえばこのリストには書いてなくて、
今回このジャイスターシリーズを読み返しているので、書いておく。

とはいうが、今更この名作に感想が必要はないと思う。
多少古臭さが感じられるかもしれないが、
SFミステリー、それも宇宙の謎に迫る展開は本当に秀逸。
主人公のハントが、様々な分野のエキスパートの間で情報を整理しつつ、
少しづつ謎を明らかにする過程もテンポがよく、手が止まらない。
こういう知的ゲーム的なSFミステリーは最高だね。

J・P・ホーガンの作品は、Kindleで読めるものはほぼすべて読んでいるが、
やはり、この作品がトップだな。
「造物主の掟」のライフメーカーシリーズも結構好き。

ガニメデの優しい巨人

2023/01/31 読了

ジャイスターシリーズ第2弾
この本から少し冒険要素が入ってくるが、
それでも前作と同じワクワクを感じられる。
異星人とのファーストコンタクトものとしては、
前日談(前作のこと)がしっかりしていたせいか、非常に楽しめた。
また、コンピュータのゾラックがいい味出しているよね。

そして、最後には前作を超える謎が明らかになるのもニクい演出だと思う。

巨人たちの星

巨人たちの星 巨人たちの星シリーズ (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン(著), 池 央耿(翻訳)

2023/02/04 読了

ジャイスターシリーズ第3弾
どうしても三部作として決着をつけないといけないせいで、
前作、前々作のような謎を解いていくということは少なくて、勧善懲悪モノになっている。
まあ、もちろん面白いんだけど、その次の「内なる宇宙」が残念な出来なせいで、
その原因が本作にあるんじゃないかという気がして、申し訳ないね。
とりあえず、一度読んだ「内なる宇宙」をもう一度読み直してみるつもり。

内なる宇宙 上

内なる宇宙 上 巨人たちの星シリーズ (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン(著), 池 央耿(翻訳)

2023/02/11 読了

感想は下巻と一緒に。

内なる宇宙 下

内なる宇宙 下 巨人たちの星シリーズ (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン(著), 池 央耿(翻訳)

2023/02/17 読了

さて、星を継ぐものシリーズで、あまり評価していない本作を再読。

改めて読んでみると、言うほど悪くはない。
科学的要素もふんだんにあるし、かと言って、ずっと説明でつまらないってこともない。
アクション要素もあるし、謎解きもあるから、普通に楽しめる。

以前読んだときはしっかり理解できてなかったけど、
コンピュータの素子の中に宇宙ができるということがどういうことかを掴めると結構面白さが増すと思う。
素子の動きがその宇宙でのルールに対応しているところなんかは結構面白い。
ここからさらに色々考えることができそうなくらいいいアイディアだと思う。

ただ、惜しむらくはクライマックスが弱いところかな。
クライマックスというか、要所要所で大事なところをもっとドラマチックに描いてほしいんだよね。
ちょっと淡々と進みすぎていたり、簡単にクリアできてしまったり。
そして、さすがハント先生って部分もほとんど皆無なのがちょっとなと思う。
あとヒロインをリン・ガーラントから変えてしまったのも。

さらにこの続きのMission to Minervaがあって、5万年前に送られたジェヴレンの指導者たちの話があるらしいから、
すごい楽しみなんだけど、翻訳はされていないのよね。
英語を読めばいいじゃないかとも思うが、この作品の英語は専門知識が多すぎてついていける気がしないのがなー。どうしようかなー。

PIRATES OF CARIBBEAN:THE CURSE OF THE BLACK PEARL

2023/02/07 読了

金曜ロードショーでパイレーツオブカリビアンがやってたので、
英語版で読もうかなと思って図書館で借りたら、
Penguin Readers: Level 2 だった。
今はPearson Readersというみたい。

だから、内容は簡単であっさり読めた。
そのせいで、エリザベスの持ってたメダリオンが海に落ちて、それによりバルボッサたちが来たところとか、
初めてウィルとジャックが出会って戦うシーンでのジャックがウィルに言った言葉とかがカットされていて、
全体的に味気ないものになっている。
まあ仕方ないよね。

ジャック・スパロウの冒険 1 嵐がやってくる!

2023/02/08 読了

上と同じで図書館で。
読んでみたら、子供向けの内容なのね。
ジャックの十代の頃の話で、どうやって今のジャックになったかを書いているシリーズみたい。
とりあえず最初の冒険としては悪くない出来ではないかと思った。
ほどよく冒険感があるし、戦いもジャックの本領である機転を効かせて勝つってところが良い。
あっさり読めたから、一応続きも読むつもり。

プロテウス・オペレーション

プロテウス・オペレーション (ハヤカワ文庫SF)
ジェイムズ・P. ホーガン(著), Hogan,James P.(原名), 黎, 小隅(翻訳)

2023/02/14 読了

めちゃくちゃ面白かった。
やっぱりホーガンは違うなと思わせる。

時間旅行モノはSFの定番であるから、読む方も目が肥えている。
なので、普通に時間旅行しただけでは全然おもしろくない。

そこで本作では、それに歴史改変モノを組み合わせ、
史実の第二次世界大戦を上手く描いている。

何より面白いと思ったのが、プロテウス世界と物語が進行している世界の事実の描写が巧みなこと。
これにより、ちょっとしたズレが起きていることが分かるのだが、
それが詳細に書かれているので、
必ずしも第二次世界大戦期のイギリス、アメリカ、ドイツを知らなくても十分楽しめる内容となっている。
(だからこそ600ページ超えの大作であるのだろうけど。)

また、物語の構成も、徐々に色々なことが明らかになっていくのが、
星を継ぐものの手法を思わせて、非常にワクワクする。
最後の300ページは手が止まらなくて、6時間ぶっ通しで読んでしまった。

登場人物が多いので、最初はいちいち登場人物一覧を見返しながら読んでいたが、
クロードやハリーのキャラクターが良いので問題なし。
そして、アインシュタインやチャーチルなど、実在の人物の登場のさせ方も上手く、
歴史を多少かじっていると、ニヤリとすることが多い。

物語の後半になって、時間旅行モノでよくある並行世界の考え方が出てくるが、
これが、物語のキャラクターが徐々に気づいて考えていくという流れになっているのも良いなと思う。
おそらくこの本が書かれた1985年当時は、そこまでまだ一般に並行世界の考え方が浸透していなかっただろうから、
ホーガンはキャラクターの目を通して気づかせることで、読者の理解を促したのではないかと思う。

よくある並行世界モノでは、わりとそこらへんがスパッとカットされていることがあって、
それよりよっぽどリアルな雰囲気を感じられるのがいいなと思った。

そして、最後のクライマックスに向けて、ハリー側とクロード側での物語が同時進行して、息もつけないのだが、
その二つの物語が繋がったときの嬉しさは何物にも代えがたい。

SFっていうのはこうでなくちゃって思わせるよね。

この本では、西側世界を善として描いているからどうしても主人公側が正しいように描いているが、
実際の歴史がそんな単純なものではないことは勿論承知しているが、
それはそれとしてこれは小説とした上で、それを分かった上で読むのが楽しい。
ハッピーエンドで終わっているのもね。

本作、ホーガンの中でも初期のほうだが、やっぱりホーガンは初期が一番面白いな。

惜しむらくは、Kindleで出ていないこと。
だから、今回は図書館で借りた。
出たらすぐ買うのに。

ジャック・スパロウの冒険 2 セイレーンの歌

2023/02/14 読了

とりあえず2巻読んだけど、すでにあまり面白くなくなってきた。
せっかく1巻でクルーが揃って冒険って感じなのに、
今作はほとんどクルーは活躍せずに、ジャックに終始している。
中盤がテンポ悪いんだよなー。

最後の伏線が今後どうなるのかってのは気になるが、
逆にいえば、伏線を張ためだけに書かれた本のような気がする。

ちょっと続き読む気力なくした感じ。

じんかん

2023/02/25 読了

非常に面白かった。

戦国時代の中でも三大梟雄に数えられる、松永久秀の物語。
一般に言われている悪人像とは異なった解釈で、
松永久秀の一生を描いたものとなっている。

これ、僕は覇道の槍を読んでいたから、
人物や時代の流れがしっかり入っている状況で読めたのは良かった。
元長の人物像も面白かったしね。

1章が終わるところで、そーきたかーっていう驚き要素もあって、そこからぐいぐい読んだ感じ。
やっぱり直木賞作家だけあって、読ませる力はスゴイな。
また、主人公の内面に迫る描写も、覇道の槍の天野さんよりしっかり描かれているので、引き込まれてしまう。

ちょっと気になったのは、主人公をカッコよく描いたせいで、
細川高国もカッコよくなってしまったところ。
主に中盤あたりの二人の会話のせいだと思うんだけど。
まあ、細川高国をどうしても悪にしないといけないってわけではないんだけど、
もうちょっと俗っぽくしてもあの会話は成り立ったように思える。

最近の歴史小説ではかなり面白いほうだったので、他作品も読むかも。

断絶への航海

断絶への航海 (ハヤカワ文庫SF)
ジェイムズ・P. ホーガン(著), Hogan,James P.(原名), 黎, 小隅(翻訳)

2023/03/03 読了

またまたホーガン。この本も面白いねー。
ホーガンは設定が上手くて、さらにそれを上手く活かす力があるよね。

本書のケイロン人社会や、ジャイスターシリーズのガニメアン社会、
またライフメーカーシリーズに出てくる異星人の社会などを読んでいると気づくが、
ホーガンは、必ずその社会を描くときに、その前提条件となる生物学的な進化の部分をおろそかにしていない。
こういう進化をしてきた生物だから、こういう社会になるということが、ちゃんと考え抜いてある。
これはハードSF好きとしては大事なポイントだね。
ここが適当だと、深みがないし、話の広がりも生まれないと思う。

ということでホーガン好きなら楽しめる一冊でした。

未踏の蒼穹

未踏の蒼穹 (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン(著), 内田 昌之(翻訳)

2023/04/08 読了

またまたホーガンだけど、正直今回は期待はずれ。
たぶん晩年になって、再び星を継ぐものの感じを別視点から書きたかったのだろうけど、
なんだろうなー。
設定は悪くないし、物語もしっかりしている。
ただ、情報の出し方が上手くないのかな。

例えば、今回は金星人達が主人公で、テラ人(地球人)が滅んだ後に地球を探索するところから始まるけど、
まずこの時点で、テラ人が金星人の祖先なんじゃないかと予想がつく。
なぜなら最初から金星人の感覚や体がテラ人と近すぎるからね。

物語の中では、主人公にタイムスケールが合わないとかなんとか、テラ人は金星人の祖先ではないって意見が出てくるけど、
だったら、最初から、現代からどれくらいの時間が経っているのかとか、
どうしても祖先ではないという根拠をきっちり提示してくれると良かった。
その予想が払拭されないまま、あれよあれよと物語が進むけど、
謎が大した謎ではないのに、それを主人公達が不思議がっているのを読まされるのは、滑稽なんだよなー。
最後にさもすごいこと発見したって感じで言ってるけど、なんでそんなことが分からなかったのってツッコミを入れたくなる。

きっと背景にはしっかり設定が作ってあるんだろうけど、どうもその設定の出し方、活かし方が微妙なんだろうね。

あと、各登場人物がやっていることなどが最後に繋がっていく流れが弱い。
星を継ぐもの風にしたいなら、もっと意外なところから発見っていう感じがほしい。

そして、今回の悪役のジェニンが非常にダサい。
主義は分かるが、頭悪いだろなって感じで、これだったらわざわざ悪役出さなくても良かったんじゃないって思う。
星を継ぐものではそういう悪役がいなくても十分面白かった。
で、そのジャイスターシリーズの3番目巨人たちの星以降では悪役を出してきて、ちょっと面白さが半減した。
でも結果的にそれは地球人の気質を説明する役もなっていたから別に良かったけど、
本書のジェニンはそういう役割を与えられることもなく、ただダサい悪役で終わってしまった。
これが残念だなー。

うーん、ホーガンでハズレを引くとは思ってなかっただけに、がっくり。
最後まで読んだけど、面白くなくて時間かかったわー。

ペナンブラ氏の24時間書店

ペナンブラ氏の24時間書店 (創元推理文庫)
ロビン・スローン(著), 島村 浩子(翻訳)

2023/03/15 読了

元々、図書館の中高生向けの本として紹介されていたので、
子ども向けかなって思っていたのだけど、
本好きな人にとっては面白いって評判もあったので、読んでみた。

読んでみると、GoogleとかPythonとかHadoopとか出てきて、
本好き+IT好きの、ちょうど僕のような人向けの本だったので、非常に楽しく読めた。

ただ、最後のオチが弱いかな。
オチ自体は悪くないけど、それの明かし方にもっと工夫をすればよかったと思う。

この本読んでから、ゲリッツズーン体ってどんな書体なんだろうって検索したら、
完全に著者の創作だったのね。
本当にありそうな説明だったから、完全にあると思いこんでいた。
本当にあったとしたらどんな書体だったんだろうな。
ローマン体を参考にしたみたいだから、それを鋭くした感じかな。
ペナンブラ氏の昔の話である、はじまりの24時間書店も次に借りて読んでみる予定。

はじまりの24時間書店

はじまりの24時間書店
ロビン・スローン(著), 島村 浩子(翻訳)

2023/04/14 読了

ペナンブラ氏の若い時の話。
「ペナンブラ氏の24時間書店」が結構ボリュームがあったから、
同じくらいのを想像してたけど、
単なるスピンオフって感じで、量が全然なかった。

別に面白くないわけじゃないけど、
ゲリッツズーン体に関する謎に絡めてくるのかなって思ってたから、
そうじゃなくて、単に失われた本の捜索劇ってだけなので、
ペナンブラ氏の若い時がどうだったかってのを知るって感じかな。

チンギス紀 一 火眼

2023/03/22 読了

北方謙三といえば、水滸伝シリーズは面白いよね。
続く、楊令伝、岳飛伝も全て読んでいる。
元々横山光輝の水滸伝が好きなこともあって、今でも年に一回は読み返したくなる。

で、その北方謙三の新しいシリーズ、チンギス紀がもうそろそろ終わりかけているらしい。
今まで知らなかったけど、ちょうど図書館にあるし、読んでみようと思って手に取った。

まず第一巻なので、人物がどんな感じかってのが分かる感じだけど、それでも結構面白い。
ここからどういう展開を経て、中国大陸を統一するのかってのが気になるね。

でも、武の達人の出し方がちょっと雑かなって思った。
キャト族とジャムカとそれぞれ2人出てくるんだけど、どっちも放浪してたら居着いた感じで、
そんなこと似せなくてもいいよって感じ。

あまり史実が残ってないからわからないのかな。
まあ、とりあえずこのシリーズは全部読んでみたい。

チンギス紀 二 鳴動

2023/03/28 読了

続き。
この巻はテムジンが戻ってきて、人を集めるところと、
それによって、モンゴル全体が少しづつ戦いに向かっていく感じの巻。
これからのための動き出しって感じ。

水滸伝でもあったが、
一つの勢力を作るには様々な技能をもった人が必要だっていうことをちゃんと取り上げていて、
簡単に人が集まってくるようなことはないなというのを思わせていくれる。

また、この巻でテムジンもジャムカも戦いに一度負けるんだけど、
簡単に勝てるわけじゃないっていうのも良いなと思う。

続きが楽しみ。

チンギス紀 三 虹暈

2023/04/12 読了

第三作も面白かった。
玄翁という魅力的なキャラクターも出てきて、面白くなっていっている。
これ、北方水滸伝のキャラクターの誰かだと思うんだよなー。
史進かな?岳飛伝の最後のほうで死んじゃったんだっけ?覚えていないなー。また読み返さないと。
でも史進だと時間軸が合わない気もする。

タイチウト族との戦いが結構長くなるかと思ってたけど、
その一つとの戦いがあっさりと終わったので、意外。

でも、戦いの様子を後でボオルチュとかダリルに言わせるのはどうなのかな。
何かもっと戦に関わっていた人が話してほしい感じ。

とりあえず次も楽しみ。

チンギス紀 四 遠雷

2023/04/30 読了

タルグダイとの決戦の前という感じが伝わってくる。
少しずつキャラクターも増えてきて、今後どんどんと転がっていく直前のような。

ジャムカへの救援や、狗眼一族など、主人公に都合のいいことは多いが、読む手は止まらない。
次が玄翁との最終戦だろうなー。楽しみ。

チンギス紀 五 絶影

2023/05/12 読了

玄翁死す!
この戦いは良かったなー。
そして、玄翁が誰かもわかったし。
そうだよね、年代的に考えたら、この人しかいないよね。
雰囲気が史進っぽかったから、勘違いしてた。

とにかくこの巻で一区切りついた感じがする。

チンギス紀 六 断金

2023/05/19 読了

タイトルの意味は、金国を2つに割るのではなくて、
金国によって草原が2つに割れるという意味だった。

ついにこの巻からジャムカがテムジンの敵になった。
いつか来るだろうとは思っていたが、こんなにあっさりと来るとは。
しかもいきなり戦って、テムジン軍は負けてるし。(まあこれには理由があるのだが)

今後も目が離せない!

チンギス紀 七 虎落

2023/05/30 読了

「虎落」と書いて、「もがり」と読む。
どうやら、強請り的な意味らしいが、この話のどこにそういう要素があったのかはわからない。
単に「虎が落ちる」という言葉を、覇を唱えていたものが落ちていく様を表していくのなら、
確かにこの巻にはふさわしいと思う。
大将連中は死んでいないが、ほとんど決着がついた感じ。
もっと巻数をかけて戦を描くかと思ったが、まさか1巻で終わりとは。
ただし、この巻の密度はすごかった。

また、この巻の中で、テムジンの弟の一人が死ぬんだけど、
そのシーンはカッコ良かったなー。

チンギス紀 八 杳冥

2023/06/12 読了

いつかは戦うと思ってたけど、
まさかこの巻でケレイト王国が裏切って、
そしてあっさり滅ぼしてしまうとは思わなかった。

戦の前部分は結構ページ数割いているんだけど、
実際に始まるとかなり一瞬って感じ。

この戦のことは、次巻にアインガとトクトアから少し語られるけど、
それを読んで、ああ、なるほど、そういう意味があったのかと納得する感じ。

チンギス紀 九 日輪

2023/06/24 読了

うすうす感じていたが、ジャムカの最期がこんなにあっさり来るなんて。
寂しいような、これで一区切りついたような。

この巻では、「我が名はチンギス」というテムジンがチンギス・カンを名乗る章があるけど、
僕の中では、1,2巻前ぐらいからテムジンがだんだんと変わっていったような気がしていたんだよね。

たぶん、ジャムカ、タルグダイ、アインガの三者との決戦を制してからだな。
そこから覚醒していったんだろうなと、今なら思う。
だから、もうどこまで見ているのかは全然わからない。
金国はすぐにでも攻めそうだけど、そっから先はどのタイミングでいくのか。

チンギス紀 十 星芒

2023/07/08 読了

ホラズム・シャー国が出てきて、付属の地図もかなり広がった。
金国との戦のために、歩兵、工作兵が出てきたけど、
あっさり揃いすぎな感がある。
まあ、あんだけモンゴルを統一していたら、すぐに人材は見つかるのかもだけど。

マルガーシがどうなっていくのかが今後の気になるところ。

チンギス紀 十一 黙示

2023/11/24 読了

ちょっと読むの止めていたので、改めて再開。

金国戦がメインで、テムジンがようやく梁山湖にきた。
また、西側のお話が少しづつ出てきて、今後の布石と思わせることが多い。

ちょっと時間の流れが早くなってきた気がする。

チンギス紀 十二 不羈

2023/12/07 読了

この巻まで読んできて、思ったんだけど、
チンギス紀って、水滸伝と違って、最初が絶望的な状況じゃないから、
あまりどの戦いも負けるかもっていう切迫感が感じられないんだよね。
チンギスが統一するんでしょって結末を知ってしまっているというのもあるけど、
なんだかんだで勝てるんでしょっていう。

もちろんこの巻ではダイルとヤクという初期から活躍してきた2人が亡くなるわけだが、
それも死に場所を探しての結果だった気がする。

チンギスの各軍が手痛い失敗をするとか、そういうことがここ数巻ないのが原因かな。
金国戦もその前の下準備が長かったのにあっさり決着ついた感じだし。

そういえば、今巻でタルグダイが結構あっさり死んでしまったのが結構びっくりだった。
もっと生かすような気がしていたからなー。

チンギス紀 十三 陽炎

2023/12/23 読了

ホラズムとの戦の前って感じ。
話もマルガーシの話が多かったし。

でも、ホラズム国が強いって感じを急に出してきたけど、
大して将軍がいるわけでもないのに、急にそういうこと言われても?となってしまう。
マルガーシがいる隊も300騎しかいないわけで、
だいたいマルガーシ自身が戦の経験がないのにモンゴル国の将軍たちと対等に戦えてしまったら、たぶん白ける。

でも、モンゴル国の使者達を惨殺して、挑発したあたりは興味深かったな。
開戦の機を掴むために、あえてそうしたってあたり。

テムゲの失敗によりボロクルがあっさりと死んでしまったのもいただけない。
水滸伝の致死軍の暗闘を見ているせいか、ちょっと簡単に書きすぎている気がしている。

チンギス紀 十四 萬里

未読

チンギス紀 十五 子午

未読

チンギス紀 十六 蒼氓

未読

チンギス紀 十七 天地

未読

あなたの人生の物語

あなたの人生の物語
テッド チャン(著), 浅倉久志(翻訳)

2023/06/18 読了

以前買って読んでいたのを再読。
やっぱり映画「メッセージ」の原作がいい雰囲気出しているよね。
映画もかなり好きだけど、原作の静かな感じも好き。

同じ作者の「息吹」も読んでみたいんだよね。

英語感覚をみがく―表現とコミュニケーション

2023/06/28 読了

「日本人の英語」で有名なマーク・ピーターセンが夏休みに高校生向けに講義をやったのをまとめたという本。
映画を元にした説明とかはかなり面白かったな。
このレベルを苦なく聞き取れるようになるのはいつになることやら。

うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81

2023/07/30 読了

絵本は結構好きで、子供とよく読んでいたが、
この人がそもそも漫画家だって知ったのは最近だったので、図書館で借りてみた。

読了とは書いているが、これは本当に「読んだ」と言っていいのか。
それぐらい中身を理解した気がしない。

そもそもコマとコマが繋がっていない漫画だっていうのは知っていたし、
絵本読んでいてもかなり変わったお話が多いので、覚悟はしていたが、それにしても訳がわからない。

でも、強烈に惹きつけられるものは感じた。
あのマンガの神様こと手塚治虫をして、狂人と言わしめたのは伊達ではない。

このマンガを理解するには一生かかるだろうと思う。
というか、「理解」ではなく感じるものなのかもしれない。

ちなみにほぼ日に佐々木マキさんのインタビューが載っているが、これ見ていると結構普通のおじさんなんだよな。

佐々木マキさんの心には おなかをすかせたおおかみが 住んでいて‥‥!? | ほぼ日刊イトイ新聞

鵼の碑

2023/09/27 読了

17年待った。
何度Googleで検索したかが分からないぐらい待ち焦がれた。
その「鵼の碑」がようやく読めた。

嬉しすぎて、ちゃんと英語の試験が終わってからにしようかと思ったが、
休みにキャンプにいった際に読み始めてから手が止まらなくなってしまった。

感想としては、鵺というよく分からない妖怪をよくこの物語に落とし込めたなと思った。
鵺という、元々は声だけしかなかった妖怪が、後で姿が生み出されたように、
様々な人々の想像、妄想が、ありもしない過去をどんどんと作っていく感じが、まさに鵺だなと。

そして、鵺が様々な動物の継ぎ接ぎで語られたように、
各登場人物が関わる物語が、少しづつ繋がって、朧げながら一つの事件が見えてくるような気がするんだけど、
実際はそんな妖怪つまり事件はないっていう構成が面白さを際立たせている。

欲をいうと、
いつもの百鬼夜行シリーズならもっと序盤のほうから京極堂の語りのページがあって、
その作品のメイン妖怪に関して、色々と講釈があるんだけど、
今回はそれはなく、久住やら緑川やらが鵺について考えるだけになっている。
そこが惜しいが、京極堂が先に説明してしまうと、結末が予想できたり、登場人物の動きが変わってしまうからなのかなと想像。

そして、やっぱり登場人物が良いな。
京極堂、榎木津、関口、木場などは毎度おなじみにしても、
緑川や郷島など、一面だけでは見れない人間性の深みがある。

ちなみに、ぬえという文字は、鵼と鵺の2字あるが、本作品ではそこも微妙に使い分けている。

次の「幽谷響(やまびこ)の家」も予定されているみたいだし、まだまだ出してほしい。

英語耳

2023/09/20 読了

発音およびリスニングに関する本としては評判が高いので、読んでみた。
ずっと発音の勉強は避けていたが、ようやくここに来て真剣に取り組んだが、
やっぱり日本人は音だけ聴いて真似するってのは無理だね。
本書のように口の形とかをきっちり覚えていかないと。
特にrの発音で、舌を巻かなくてもいいやり方があったのは僕にとってラッキーだった。

発音記号は覚えなくてもいいって記載をネットでよく見かけるが、
日本人が母国語の漢字を覚えるときにルビが必要なように、
発音記号はちゃんと覚えたほうが勉強の効率がいいと思う。
そりゃ、ネイティブの人は発音記号なんて存在を知らない人も多いだろうが、
日本人が、発音記号を覚えずに同じように音だけ聞いて学ぶのは時間がかかり過ぎる。
発音記号を覚えなくていいって言ってるのは、英会話学校とかが多くてそれはポジショントークだろうなと思う。
(発音記号なんて覚えなくてウチに通いなさいよって。それは穿ちすぎ?)

まあ、とりあえず本書は今まで発音をおろそかにしていた人にオススメ。

もものかんづめ

2023/10/23 読了

ちびまる子ちゃんのさくらももこの初エッセイ。
学生時代、作文の採点で清少納言の再来と評されたらしいので、読んでみたが、
確かに面白い。

ほんと、着飾らない言葉で紡がれていながら、
それでいて、例えが絶妙。
気軽に読めたので、この次のエッセイもどんどん読んでみようかなと思った。

白と黒のとびら

2023/11/03 読了

図書館でふっと見かけたのでパラッと読んでみたら、
面白かったので、そのまま借りたらわずか一日で読んでしまった。
さあ、皆もこれを読んで、是非とも第八古代ルル語の省きと延ばしの呪文を練習しよう。

さて、
話としては、オートマトンからチューリングマシンまでを物語としているのだが、
そのストーリーが、魔術師の弟子が自然と学んでいく構成がかなり雰囲気出ていて全然飽きない。
かと言って、オートマトンの説明が雑なわけではなく、ちゃんと考えれば分かるぐらい平易である。

世界観の作り方がうまいなと思った。
特に呪文の本質を言葉(ここでは形式言語のこと)にしたこと。
そして、古代ルル語や古代クフ語など現実にはない言語とした上で、
遺跡や塔、妖精などの様々なアーティファクトを用意して物語としてまとめたのが非常に上手い。

そして出てくる登場人物が、この本の本質を邪魔しない。
昨今の過激な人物設定は、最初のインパクトには使えるが、本が進んでくると結構ノイズになりやすいので、それがない分、自然に読めた。

ちょっとメタ的な言い方になっているので、別の観点から言うと、
登場人物が皆優しく、それでいて根気強く教えてくれるので、
最後のハッピーエンドを余計なこと考えずに楽しめる。

一点だけ言うなら、妖精や小人が遺跡などからどうやってパワーを得ていてなぜそれが言語戦争になったのかの説明が弱いところかな。
そういうもんって感じで語られていて、ちょっと無理矢理感があった。

続編の精霊の箱もすぐ借りて読む予定。

精霊の箱 上

2023/11/13 読了

もうガレットが魔術師になった後の話かと思っていたが、まだ魔術師見習いだった。
でも前作の「白と黒のとびら」よりストーリーに重きが置かれているように思う。
もちろん、だからと言ってオートマトンやそれに関する呪文が疎かになっているわけではなく、
そこは2進数などが出てきて、コンピュータ系の僕としては色々楽しめている。

謎が多いので、ストーリーの感想は下巻と一緒に書く。

精霊の箱 下

2023/11/27 読了

面白かった!

前作よりもかなり魔術要素がいっぱい出てきて、かなり楽しい。
そして陰謀もなるほどと思わせるものだったし。

下巻は結構早い段階から主人公のガレットが辛そうで、読み進めるのが大変だったが、
良いところで師匠のアルドゥインが出てきたりして、手が止まらず、2日で読み切ってしまった。

上巻から2つの物語が交互に出てくる構成で、
こういう構成はなかなか当たり外れがあるのだが、
下巻を読むと、それが敵の外部と内部(厳密には内部ではないが)からの物語となっていて、
なぜこの構成だったのかというのがよく分かるようになっている。

徐々にコンピュータのメタファーが出てくるので、
だんだん僕らの知ってるコンピュータに近くなっていくのが面白い。

また、最後のほうでは暗号理論が出てくるだが、
共通鍵暗号と公開鍵暗号が出てきたときは思わずニヤリとしたね。

どうしてもこういう本の性質上、登場人物がちょっと説明しすぎになるのが気になるが、
それでも、それを敵が焦燥の中で自分を落ち着かせようとしているという描写で書いたりしていたので、
そこまでクドい印象はなかった。

そして、この物語で一番いいところが、
ガレットが大事なところでは悩みながらもいつも正しい判断(文中でいう、「間違っている」判断を絶対に選ばない)をちゃんと選ぶところ。
それが自分にとって辛い選択でも逃げずに選んでいる。
必ずしもこの主人公は才能があるわけではない(実際よく捕まっている)が、
この判断の良さがガレットを主人公足らしめていると思う。

エピローグを読むと、えー!その間のガレットの物語がまだ読みたいっていう気になるが、
今のところ続編はないので、ここで終わりな気がする。

この作者の他作品も読んでみたいな。

造物主(ライフメーカー)の掟

造物主(ライフメーカー)の掟 (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン(著), 小隅 黎(翻訳)

2023/11/09 読了

2016年には読んでいるけど、久々に再読。
J・P・ホーガンといえば「星を継ぐもの」と、誰もが口を揃えて言うし、僕もそれに異論はないけど、
このライフメーカーシリーズもかなり気に入っている。
主人公のザンベンドルフが心霊術師(超能力者)というのは、科学者が主人公が多いホーガン作品の中では異色とも言える。
実際、それでこのシリーズがちょっと好きじゃないって思っている人もいるだろね。

でも、よくよく読んでみると、主人公は確かに超能力者を振る舞っているし、それで名声を得ているが、
自分が超能力を持ってたり心霊術を使っているとは言っておらず、
あくまで人とは違う能力をもっているとしか言っていない。
(まあ、パフォーマンスのやり方が明らかに超能力っぽいから絶対勘違いされるが。)
しかも、ザンベンドルフ自身は、自分が超能力ではなく奇術であることを知っていて、
それをどう見せれば大衆がついてくるかということに心を砕いている。
だから、どっちかというと心理学に長けている感じかな。
また、そのチームスタッフが優秀なので、人には思いもよらないことができる。

で、そういう主人公が土星の衛星タイタンに行って、機械人(ロビーイング)と接触し、彼らの社会を守るために力を尽くすというのが大筋なんだけど、
ここでは、なぜホーガンがこの作品を書いて、なぜザンベンドルフを主人公に据えたかを書こうと思う。

「断絶への航海」の感想のときにも書いたけど、
ホーガンは、異星人の社会を書くときに必ずその生物の進化過程を描く。
本作はそれが最も強く書かれたのではないかと思われる。
機械人という、いわゆる知性をもったロボットの社会というのはそれほど突飛なアイディアではないけれど、
しかし、その機械人たちが自分たちの種族の出自を知らないというのは珍しい。
また、そこに至る進化の過程が、物語始まってすぐ描かれるものだから、すぐに物語に引き込まれる。

そして物語が進んでいくと分かるが、
機械人たちの世界(衛星タイタン)は、
岩は氷、植物や動物といった「生命」という言葉が指すものはすべて機械、家などは有機物を育てて作るという、地球とはちょうど正反対の世界。
それなのに、世界観はまるで中世ヨーロッパのように宗教や迷信に彩られているという。
想像するのも大変な種族が、結果人間と同じ社会を構築しているというのが面白い。
ここがホーガンのすごいところで、安易に全然違う社会にしなかったところ。
他の作品では、地球と違う社会を数多く書いているので、
この作品では、種族は全く違っても社会は同じにしたことで、それまでとは違った展開が可能になっている。
また、中世ヨーロッパという、ちょっと想像しやすい社会を選んだことで、読み手が入っていきやすいようにしている。
読み手側としては、有機物と機械が逆な世界のせいでそういう文章が出る度に結構混乱するので、社会は普通にしてくれて非常に助かっている。

そんな中世ヨーロッパ社会なので、宗教家や王が権力を握っており、
一般の機械人は盲目的にそれを信じている。
大地は丸いとかを言った機械人は弾圧されてしまうような世界だ。
ちなみにこの宗教は、機械人たちを想像したとされている造物主を崇める宗教(ライフメーカー信仰)で、地球でいうところのキリスト教だね。

そこに地球人が現れるのだが、地球人の思惑もまた一枚岩ではなく、
機械人を奴隷化し、タイタンの世界を地球のための生産工場にするつもりの一派と、
主人公のザンベンドルフたちが属する、機械人をそんな風に扱わず、ちゃんと理性をもった人々として扱い、支援していこうという一派の対立となる。

前者の一派は主にタイタンに派遣された人達の中の主導者的な立場の人達。
機械人なんてどうせ機械で本当の知性などないのだから、地球のために利用しようという考えで、
対してザンベンドルフ達は、最初にタイタンに降り立って機械人たちと交流を交わしたせいか、その目に知性の光を感じ、
この種族に世界の本当の姿など様々なことを教えて、独立した種族として歩んでいってほしいと思うわけだ。
(もちろん機械人側の中でそういうことを望んでいた人たちの希望であったからというのがあるが)

ここが一つ目の、人々の心理を読む奇術師を主人公に据えた理由で、
これが例えば科学者とかを主人公にすると、機械人をただの機械として見るようになってしまう。
そうじゃなくて、常に心理を気にしている職業だからこそ、
機械とはいえ、その動作や文言に地球人臭い心理を感じ取れるというわけだ。
(別に科学者をメインに据えてそういうストーリーにもできなくはないが、そこまで無理して科学者にする必要もないと思う)

そしてホーガンがこの話を書いた理由がここにあり、
例え姿形がどのようなものであっても、知性は宿る可能性があるし、それを尊重していかなければならない、ということなのだろうと思う。

そんなこんなで地球人内での対立と、機械人内での対立(権力者側と改革者側)がだんだんとリンクしていくわけであるが、
ザンベンドルフ側が、ひょんなことから山の上で一人の機械人グルーアクと会うわけだ。
グルーアクはそれまで敬虔なライフメーカー信仰者だったのだが、
地球人たちと出会うことで、天啓を受けたと思い、非暴力不服従の新しい宗教の指導者に改宗してしまう。
これは、地球人たちがヘリコプターや飛行機など、自分達が産み出した機械を駆使しているために、
機械人達にとってみれば、ライフメーカーと変わりがないと思ったからだ。
(機械人には飛行機がドラゴンに見える、など、この対比もホーガンがうまく利用しているなーと思う。)
地球人でいう、天使が降り立ってお告げを授けるみたいな感じ。
奇術師が主人公だから、こういう「演出」はお手の物。

また、そのお告げの際には、お互いの種族の言葉の翻訳機がまだ試作品だったこともあり、
簡単な言葉でしか機械人に伝えられないという状況になっているわけだ。
そのため、なるべく簡易な言葉のみで伝えようとすると、
「汝、隣人を愛せよ」みたいな、色々解釈の幅があるお告げになってしまう。
この部分はきっと、神や天使が地球人にお告げを行ったのが実はこういうことだったかもね、というホーガンによるちょっとしたジョークなんじゃないかと思う。

そして、グルーアクが他の機械人たちを次々と改宗させ、
大きなうねりとなって、既存の権力者たちを失脚させようとするのだが、
機械人を奴隷にしたい地球人一派は、それを邪魔することで、
権力者たちがグルーアクを捕らえるように仕向ける。
捕らえたグルーアクを異端として公開処刑(崖から酸の窯に落とす)しようとしたところで、
ザンベンドルフ達が、空から飛行機(ドラゴン)に乗って現れ、すんでのところでグルーアクを助けるという演出を行うわけだ。
それを見た機械人の民衆は、奇跡を目のあたりにしたとして一気に改宗し、権力者達を引きずり下ろしてしまう。

結果として、機械人達は自分たちで独立した不羈の民として生きていくことを決断。
見事ザンベンドルフたちが勝利し、奴隷を望んでいた地球人たちは決定的な証拠が見つかって、地球側から罷免されるという結末で終わる。

ザンベンドルフを主人公に据えた二つ目の理由は、この最後のクライマックスの演出のためだね。
グルーアクを助けに行くにあたって、実は危険かもということで反対意見もあるのだが、
知性があり、自分たちが導いた存在をそのままにはできないという、人間としての理性に則った判断も主人公っぽくて熱い展開。

結論として、この物語は、
ホーガンが書きたかった機械人たちの世界を一番際立たせるものとして、
心霊術師ザンベンドルフが主人公に選ばれたというわけだ。
よくある職業を主人公にしなかったことで、結果としてウィットに飛んだキャラクターになったと思う。

さて、長くなったが、最後に本書のタイトル「造物主(ライフメーカー)の掟」について。
本書にライフメーカー自体は出てこないが、
ザンベンドルフたちが山の上でグルーアクに語ったお告げを指して掟と言っているわけだ。
また、原題は「Code of the Lifemaker」で、
Codeは、おそらく掟の意味以外に、ライフメーカーたちのプログラム=その結果生まれた機械人たちという意味もあるのではないかと思われる。

続編の「造物主(ライフメーカー)の選択」も面白いので、また読んだら書こうと思う。

造物主(ライフメーカー)の選択

造物主(ライフメーカー)の選択 (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン(著), 小隅 黎(翻訳)

2023/11/18 読了

さて、続編。これも再読。

この話の一番好きなところは、
機械人の起源となる異星人(ボリジャン)と、そのコンピュータであるジニアス5の存在。
ボリジャンの進化の過程と、その社会性である、他人を蹴落とすことにチャレンジ精神を感じる種族であるという特徴が良かったなー。

面白いんだけど、お話としては前作のほうが好き。
なぜなら、最後のほうでジニアス5をザンベンドルフ側が味方につけてボリジャン達に対抗するのだが、
そのやり方がちょっとツッコミどころありすぎだからだ。(そして、問題を解決してからはジニアス5が味方になった理由を忘れてしまったというオチも興ざめ。)
元々ホーガンは続編書くつもりなかったらしいしね。

そして笑ったのは、グルーアクが川下り(タイタンの川なので、ベルトコンベアのこと)するところで、
地球人側に電波で話しかけたら、「ただいま留守にしております」という自動音声が流れるところ。

数の女王

2023/12/18 読了

お話としては、同じ著書の白と黒の冒険や精霊の箱のほうが複雑で楽しかったかな。
でも、数学の中の数の面白さをうまくお話に落とし込んだと思う。

特に良かったのは、巡回数や素数を求める式あたりかな。
この話のように面白さを紹介されるともっと調べてみたくなる。

そして、この著者の他作品もそうだけど、
ちゃんと主人公の心の強さを描いているのがいいところだと思う。
ただ数学のことだけに終始するのではなく、人間的な強さや葛藤を描いているので、感情移入ができる。

今後も機会があったら他の著書を読んでみようと思う。




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